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食品の嗜好成分(2) 色

食品の色には、いろいろあります。

まず、イメージをつかんでください。色って大事なんですよ。

卵焼き いちご

上の2枚の画像のうち、まあ、いちごは普通においしそうな色ですから置いとくとして、卵焼きの変なこと!どちらかというと食べるのを遠慮したい色合いです。

実は卵焼きの方には「ある粉末」が入っています。いえ、ごく普通に販売されている食用粉末ですが、卵白と反応しちゃいました。こういうのを見ると、「おいしさ」に及ぼす色の影響は大きいなあと思いませんか。ちょっとの焦げはあったとしても、卵焼きは黄色い方がおいしそうだと思います。

なお、上の卵焼きは、色が変?なだけで、味は普通の卵焼き。

え~、その謎は何?と思う人は下の方まで読んでみて。


色素の分類

大きく、脂溶性色素と水溶性色素に分けてみましょう。

<脂溶性色素>  ※水には溶けにくい色素です。

グループ名主な化合物主に含まれる食品備考
カロテノイド βカロテン

緑黄色野菜、柑橘類、卵黄、

さつまいも、にんじんなど

体内でビタミンAの働きもする
(プロビタミンA)

βカロテン独自の生理作用
(生体内抗酸化作用、がん予防作用など)

リコピン すいか、柿、トマト
ルテイン 卵黄、さつまいも、南瓜
β-クリプトキサンチン うんしゅうみかん がん予防など生活習慣病予防効果がある
キサントフィル類 鮭、カニ・エビ、ます、トウガラシ トウガラシのキサントフィル類はカプサイシン
クロロフィル クロロフィル 緑色植物 βカロテンとともに細胞内で光を吸収する働きがある

脂溶性色素の代表はカロテノイドで、β-カロテンがいろいろな食品に含まれています。色も黄色からオレンジ、赤色までいろいろです。昔は「カロチン」とも呼ばれていましたが、今は「カロテン」と呼ばれることが多いです。カロテノイドには全部で700種類くらいの化合物があるのですが、ごく一部を掲載しています。
植物性ばかりでなく動物性食品にも含まれていて、卵黄や、焼くとピンク色の魚、甲殻類などのピンク色がキサントフィル類というサブグループのカロテノイドになります。いちいち物質名を書いていませんが、興味があれば調べてみてください。
トウガラシ色素のカプサイシンうんしゅうみかんのβ-クリプトキサンチンは聞いたことがあるかな?

β-カロテンは食品標準成分表にも含有量が記載されている栄養素の一種です。
体内ではビタミンAの作用をするので「プロビタミンA」と呼ばれています。プロビタミンAはβ-カロテンだけではありませんが、食品に多く含まれているのがβ-カロテンで、それでもビタミンAの1/6ほどの効力しかありません。ですから、もっぱらβ-カロテンがプロビタミンAとして扱われているようです。
最近は体内において抗酸化作用や生活習慣病予防作用があることも分かっていますから、有用な機能性成分として取り扱われることも多いです。

【お役立ちコラム】

なお、カロテノイドは脂溶性ですから、例えばスイカを食べて白いTシャツの上に落としてしまったら、水洗いだけでは落ちません。食器洗い用の洗剤をつけて もみ洗いが良いと思います。

スイカだから水洗いで落ちそうなものなのにねえ・・・と思ったあなた。そういうわけではなさそうですよ。気をつけて。

ミカンを食べすぎると皮膚が黄色くなる(柑皮症)のも、実はミカンに含まれるカロテノイド色素によるものなんです。これも脂溶性。

すいか

<カタカナが多い・・・>
色素の名前は、カタカナがたくさん登場します。これは、化学構造に基づく名前をそのまま言葉に表したので、カタカナなんです。名前の付け方には一定の決まりがあり、例えば、「○○○ノイド」と書かれた専門用語(化学用語)はグループの名前につける語尾なんです。果菜類、根菜類の「類」と同じようなイメージですね。万国共通な言い方ですから、カタカナは読みづらいと思えば、英語の単語として書いても問題ありません。ただし、日本語はあるものとないものがあり、ないものの方が多いんじゃないかな。

まあ、単語を覚えるのと同じように考えてもらっても良いと思います。

水溶性色素  ※酸性やアルカリ性で色が変わるものがあります。

水溶性色素は、フラボノイドがメインになります。カロテノイドと同じ「○○○ノイド」ですから、グループ名です。グループ内には、1000種類以上の化合物が属していて、大所帯なものですから、サブグループがあるのです。実際には、化学構造によってサブグループが決められています。本来アントシアニンもフラボノイドのグループに入れるのですが、分けて書きます。

<フラボノイド> 

サブグループ物質名主な所在
フラボン アピゲニン 薄黄色 パセリ、セロリ
フラボノール ケルセチン(※) 黄色 タマネギ、緑色野菜
ルチン 薄黄色 小麦粉、蕎麦、茶
イソフラボン(※) ダイゼイン 無色 大豆および大豆加工食品
ゲニステイン 無色 大豆および大豆加工食品
フラバノン ヘスペリジン 無色 かんきつ類
カテキン(※) カテキン類 薄黄色 茶葉

物質名は、聞いたことがあるかも?というものを中心に入れています。特定保健用食品の関与成分(※のあるもの)になっているものもあります。いずれも食品の機能性成分として有用であり、多くの研究が蓄積しているものばかりです。他にもたくさんのフラボノイドがあります。

野菜の「科」は、知っておくと便利なことがあります。生合成経路が似ているようで、含有成分が似ているのです。流通している野菜はアブラナ科が多いですが、他にもセリ科やナス科などもあります。アブラナ科の野菜(ブロッコリー、白菜、レタス、菜の花など)には、ケルセチンなどのフラボノール含有量が多いように思います。

ヘスペリジンやルチンは、昔ビタミンPとも言われていた化合物です。毛細血管を強くする作用があります。

イソフラボンに関しては、食品安全委員会の見解が出されています。確認してください。女性ホルモン様作用を持つ機能性成分です。特定保健用食品としては骨の健康が気になる人向けに食品が開発されています。骨密度を高めるためにはカルシウムが必要ですが、骨からのカルシウム溶出を防ぐ働きがあるからです。

緑茶のカテキン類は、特定保健用食品のなかで、体脂肪や血中コレステロール値が気になり始めた人向けに開発された茶飲料の関与成分として有名です。これを飲んだからと言って「痩せる」とも限りませんが、色や味の主成分であることは間違いないと思います。

アルカリ性になると、黄色が強くなることから、小麦粉にアルカリ性のかん水を入れてめんを黄色くすることも行われています。いわゆる「中華めん」です。うどんとは違った強いコシや食感はかん水由来と言われています。

【お役立ちコラム】

オニオン

タマネギは、新タマネギの場合皮が白いですよね。

それを軒下などにつるしておくと黄金色になります。軒下などにつるすことで、タマネギ中の色素の構造が少し変わって、黄金色になっています。黄金色の色素のメインはケルセチンです。普通はタマネギを切ってみても分かるように、薄黄色か無色に近いのですが、構造が変わると黄色味を帯びるようになります。タマネギをよく炒めた時の薄黄色、といえば分かるかな?

染料として染物などに使われることもあるようですね。

 


 

<アントシアニン> アントシアニンは多くの場合、複数の物質で一つの食品の色を作り出しています。つまり、一つの色が一つの物質で構成されていないということです。
食品にも多いのですが、スイートピーやヒヤシンスなど、花の美しい紫色・赤色などはアントシアニンであることが多いです。 ※カロテノイドである場合もあるので、全部がアントシアニンによる、ものではありません。

分類物質名主な所在(色)
シアニジン シソニン 赤シソ(赤紫)
クリサンテミン 黒大豆、あずき(赤紫)
デルフィニジン ナスニン
ペラルゴニジン ざくろ

物質名まで書き始めると細かく書かないといけない・・・と思ったら、えらくあっさりしたものになってしまいました。科学教育センターのページを参照してください。

アントシアニンの色素が多い食品
ぶどうの果皮、さつまいもの皮、ムラサキイモ、ローズヒップ、ハイビスカスティー、赤キャベツ、ブルーベリー、いちごなど。ハーブティーの紫色は大半がアントシアニンです。
不安定な色素ですが、ブルーマロウというハーブティのアントシアニンも面白いです。水道水を沸かして乾燥花を入れると、青紫からベージュ色にまで、みるみるうちに色が変わります。

アントシアニンは水溶性の色素ですが、酸性にすると鮮やかな赤色になります。比較的安定で、食品添加物にも良く用いられています。梅干し漬けの赤ジソは昔ながらの添加物ですね。洋服などについたアントシアニンを落としたい場合は、石鹸のように酸性にならないものの方がいいかもしれません。
体が主にたんぱく質でできているので、アルカリ性の食品は少ない(体を構成するたんぱく質が溶けるかもしれない)のですが、ちょっとくらいならアルカリ性の食品もあります。例えばこんにゃく。市販コンニャクに入っている溶液は水酸化カルシウム溶液ですからアルカリ性。卵白もアルカリ性です。(卵黄はアルカリ性ではありません)

下記の色は、紫いもパウダーを添加したせいで、こんな色になりました。紫いもパウダーのアントシアニンが卵白のアルカリに反応して色が出た、ということのようです。

卵焼き たまご

紫いもパウダーは粉末で水に溶解するわけではありませんから、少しの水で均一な状態にしたところに卵を割り入れるとうまくいきます。(右の写真)で、あまり卵黄を混ぜきることなく、マーブル状態にして焼くと左のようになるのです。卵白の組成には個体差があるので、モノによっては青くなります。パウダーの添加量でも色は違ってきますよ。卵1こに対して小さじ1/2のパウダーくらいでしょうか。卵は焼いてもいいし、クッキングペーパーで箱を折り、その中で調製して電子レンジ加熱(600Wなら45秒ほど)してもいいです。

実際に、個々の物質名まで覚える必要はないと思いますが、ナスのナスニンやシソのシソニンは分かりやすいので覚えやすそう。化学物質なのになんでそんなおちゃめな名前?・・・と思ったあなたは、ピンときましたか?物質名はそれを見つけた人がつけています。で、これらは、お茶大の黒田チカ先生が命名されたのです。昭和初期の話ですけどね。つまり、日本人が命名したからこんな名前になっているというわけです。昔でも、カタカナはめんどくさいなあ、とお考えになられたのかも。

アントシアニンは、pHを調べる教材として良く使われています。一般的には紫キャベツをすりおろすなどして汁を絞るのですが、おろし金は子どもに使わせると危険な気もするので、煮出し汁を作ってさましましょう。あるいはハーブティーにしてください。ハーブティーは熱水抽出すれば良いので使いやすいです。バットなどに移して紙を浸せばお手製リトマス紙ができます。家庭科では使わないですが、理科だと重宝しそう。
アントシアニンを使った理科教材のページ(科学教育センターのページ)

 もっと詳しく調べたい場合・・・農研機構花卉研究所 色素の基礎知識