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食品の嗜好成分(1) 味

食品の嗜好成分は、具体的には食品の「おいしさ」を構成する成分を指しています。

食品のおいしさには、【物理的なおいしさ】(食感・テクスチャーなど)と、【化学的なおいしさ】(味・香り・色など)があります。、嗜好成分は【化学的なおいしさ】に属するかもしれません。

 

食品の味

5つの基本味は、赤ちゃんにも理解できる味です。甘味や塩辛味、うま味は生きていくうえで必要なミネラル・成分の味には好意的な反応を示しますが、苦味や酸味には顔をしかめると思います。
酸味は、酸敗が進んだ味。つまり、腐ったものの味だから、嫌われるのです。でも、成人には好まれることも少なくありません。
じゃあ、苦味は?というと、苦味は毒物の味、なんです。有毒物質は多くの場合苦いですから、嫌われます。ヒトに関しては好き嫌いが分かれます。ビールの苦味を考えてみてください。ビールが好きな人には、あの苦味はこたえられない味だと思いますが、ビールが苦手な人にとっては、苦いばかりで、嫌でしかないものです。

味と香りは深くつながっていて、鼻をつまんでみかんを食べてもみかんかどうかはわかりにくい場合があります。
風味」という表現は、味と香りは切り離せないので、二つを合わせて表現した言葉です。つまり、みかんの香りと味が、「みかん」である、と認識させているのです。鼻をつまみ、アイマスクをして何かを食べても、意外に分かりにくいと思います。試してみてください。

 

トウガラシの辛味

トウガラシの多い食べ物(辛いカレーや、トウガラシせんべいなど)を食べると、火を噴くような辛さもさることながら、大量に汗をかいたりすることがあります。あれは何故あんなに辛いんでしょうか。考えたことがありますか?辛味は「味」ではなくて、刺激の一種です。すごく辛いものを食べると痛くなりませんか?

トウガラシの辛味成分は、【カプサイシン】とよばれる化合物で、品種によってカプサイシンの量が異なり、辛さが違うようです。天然のカプサイシン類に属する化合物には、辛くない化合物もあるのですが、辛くない化合物は含有量が少ない場合が多いです。

似たような辛味成分には【ジンゲロール】と呼ばれる化合物もあります。ジンゲロールは生姜の辛味成分です。

コショウのつん、とくる辛さ。これは【ピペリン】によるもの。ワサビはタマネギなどと同じ硫黄が入った構造の【アリルイソチオシアネート】が原因です。つ~ん、として、たいそう辛い時がありますね。硫黄が構造式に入っていると独特のにおいになります。

トウガラシ
HOT(ホットな辛さ)とSHARP(シャープな辛さ)


辛さを表す表現は、日本だと「辛い」だけになるのですが、英語には大きく分けて2種類の表現があります。トウガラシは汗が噴き出すHOTな辛さ。ワサビの辛さはSHARPな辛さ。つーん、と鼻にくる辛さです。イメージはしやすいかな。

日本料理には、生姜や七味・一味・かんずり、ゆずコショウ、ワサビ、山椒、コショウなど、少なからず辛味の香辛料はあるように思います。多くの場合、吸い口などで香りをつけたり、魚を煮付ける時に臭み消しに使ったりします。汁物全体に香りをつけることはほとんどないんじゃないかな。【だし】がありますからね。

カプサイシンの生理作用
カプサイシンには体熱産生効果があります。辛さの感じ方はヒトによりますが、摂取後短い期間で体が熱くなり、大量に発汗した経験のある人はいるかもしれません。カプサイシンはがんの制御や抗炎症、抗肥満、鎮痛、抗菌、抗酸化、抗ストレスなどいろいろな生理活性を有することが知られています。

その他いろいろ

いろいろな苦味

ニガウリ(ゴーヤ)は大変苦くて、それが好き嫌いを決めているようにも思われる野菜です。ニガウリの主な苦味の成分はククルビタシンと呼ばれる物質です。だから?と言われると困りますが・・・、
例えば、ニガウリの加工食品を作る際には、苦味成分の量を確認しておかないと、品質に差ができてしまいますよね。そこで、品質管理の1つとして、原料のニガウリに含まれるククルビタシンの量を調べて管理するのです。ある食品の特徴を決める味成分(呈味成分)や香り物質(香気物質)の組成は大変重要だと思います。良い香りなら、合成で作って加工食品に添加するのもアリ。合成着色料や合成香料は、そんな目的で作られています。

ホップの苦味は、イソフムロンとよばれる物質です。その他にコーヒーなどのカフェインチョコレートのテオブロミンネーブルオレンジの皮に多いリモニンなどが苦いと感じられる物質です。一口に苦いといっても、その苦味の「質」はいろいろだということが食品名からもわかります。なお、化学構造でいうと、アルカロイドは苦いものが多いです。アルカロイドってなに?と思ったあなたは、調べてみてください。有毒で口にできない場合が多いので気をつけましょう。

 

うま味(グルタミン酸ナトリウム
うま味はグルタミン酸ナトリウムと呼ばれる物質の味です。
1907年に池田菊苗(いけだきくなえ)先生が昆布から抽出されたのがグルタミン酸ナトリウム。池田先y生は好物の湯豆腐をお召し上がりになりながら、昆布のうまみ成分について考えられたのだそう。
確かにね、昆布からうま味成分が出るのは、今や常識なのでしょうが、どんな物質が湯豆腐の湯にあるのかと考えられたところはすごいと思います。お湯に溶けていればわかりませんもん。
それに、欧米のような硬水だと湯豆腐という調理自体存在し得ないものであったかもしれません。

ずっと「うま味受容体」が見つからなかったのですが、それも見つかり、消化管にも受容体があるのではないかということも分かってくるようになって、うま味はめでたく?基本味に昇格したのです。

もっとも、うま味はグルタミン酸ナトリウムだけではなくて、玉露のテアニンかつおぶしのイノシン酸貝類のコハク酸、などうまみ成分と呼ばれる物質はたくさんあります。

 

渋味
渋味は、口の中のタンパク質が変性した時の感覚というふうにも言われています。渋柿を食べた時の渋味が代表的なものでしょうか。赤ワインや濃いお茶などの渋味というほうがわかりやすいかも。一般名では【タンニン】と総称されていて、具体的な食品によって、その組成が違うようです。緑茶の渋みは【カテキン】と呼ばれる化合物グループです。カテキンは、市販緑茶の食品表示にも記載されているので知っている人も多いかもしれません。