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食事の文化

お箸の使い方や食事作法など、食事にまつわる文化のあれこれ・・・ 食事の多様化にともない、食文化も変化していくようです。 自分の国の食事文化についてどれだけ理解できていますか。

食事

食事の文化

1) 食事の作法(食べる時のマナーやルール)は必要なのだろうか?
     一人で食べる?みんなで食べる?

2) 日本にはいろいろな料理があるのに、なぜお箸で食べるの?
     ステーキやサラダでもお箸がいいの?

3) 「食べ合わせ」とか「ひたひたに水を入れる」とかって何?
     「天ぷらとかき氷」「ウナギと梅干」のようなものが「食べ合わせ」

 

4) 世界の食文化は食べ物を食べる道具から考えるとどう分類できるのだろう?
     三大食作法って言葉があるから、3つかな?

 


■ 食事の作法

食事作法(食事規範)とは、複数の人で食事をする場合に、楽しく気持ちよく食事ができるように長い間かけられて整備されたマナーです。もしかすると、いつも一人で食事をしている、という人もいるかもしれませんが、一人で食事をするのが原則なら、おそらく食事作法は不要でしょう。どんな格好をして食べても誰も何も言わないからです。ヒトは、従来食事を一人でするもの、とは認識していませんでした。食事とは、家族で、あるいはみんなで気持よく食べるもの、つまり、家族や仲間のコミュニケーションツールなのです。だから、みんなが気持ちよく食事ができるように、食べやすいように、そして、食事をする人々が信仰している宗教や慣習に反することのないように、その国の食事スタイルに応じたマナーが出来上がっていったのです。

国によって食事の作法が違うのは、当然といえば当然かもしれませんね。

 

配膳
 典型的な和食の配膳の仕方
現代の食事では「ご飯と汁物とプラスα」を食べるとも限りません。

 よって、左のような配膳の仕方は万能ではないのです。ただ、このように置いて食べると、(右手に)お箸を使って食べる時には食べやすいので、作法上は固定されています。お箸を左手で持つ人は、お箸やご飯の位置を自分で変えると良いのではないかと思います。それは間違いではありません。副菜は以下のように決まっています。
【副菜1】小鉢程度の副菜(お浸し、香の物、ヒジキ煮など)
【副菜2】野菜の煮物やサラダなど分量が多めのもの

 この配膳に基づいた食べ方は食事バランスガイドで紹介されています。

飯(めし)はご飯と言いますが、これは、尊敬を表す漢字である「御」という文字を最初につけて「御飯」つまり、「ごはん」となっているそうです。ちなみに「お粥」も漢字で書くと「御粥」になります。いずれも貴重な白米だけを使って作るものなのでそのように呼ばれるようになったようです。 日常的には、身分にもよるのでしょうが、農民は野菜や雑穀などを混ぜて鉄鍋で煮込んだ雑炊を食べることが多かったようですね。なお、汁物のなかで「吸物(すいもの)」は、「(良い)だしを吸う」と意味の汁物です。日本料理ではおめでたい席に酒のお供として提供され、さつま汁やけんちん汁のように具沢山には作りません。

 

なお、実際の家庭では、大皿に、作ったおかずをすべて盛りつけて各人が取り分ける形式(バイキング形式)の食事の仕方もあります。そのような配膳の仕方を「大皿(おおざら)盛り」といいます。それに呼応する表現として、一人分のおかずを盛り付けて各人が食べる形式の食事を、「個別((こべつ)盛り」と呼んでいます。

従来の日本では、「大皿盛り」は「ハレ(おめでたい)の日の食事」でした。普段(普段の日はハレの日に対してケの日と呼ばれています。)は個別に盛られた食事を家族で静かに食べます。食事中の会話はタブーという場合もあったようです。昔の一般家庭では、同じおかずが続いたり、主食が雑穀混じりの飯であることもあったでしょう。その代わり、ハレの日は、大勢が集まり、酒も出て、みんなで楽しくワイワイ食べたのです。保存性の利くお寿司や煮物などを出せば、女性も常に台所にいることなく、一緒に楽しむ時間ができます。それが貴重なレクリエーションだったのでしょう。この他にも節句ごとに特定のものを食べたり、初物を食べたりして、食生活を楽しみながら健康に配慮していたものと考えられます。

参考:大皿盛りと個別盛りの比較 (毎日新聞2007年5月15日の記事 「大皿盛りは要注意」 を参考に作成)

盛り付け食事量の把握食事作法 偏食指導後片付け  食事の見映え
大皿盛り 多くなりがち ある程度必要 難しい 比較的容易 豪華に見える
個別盛り できる 従来通り必要 容易 食器が多い 盛り付け方による

 

大皿盛りは後片付けがしやすいうえに、個別盛りで食べるよりも和やかな雰囲気となり、会話がしやすくなります。冬によく登場する暖かい鍋物も大皿盛りの変形と言えるでしょう。しかし、大皿盛りだけでは日本の食文化を完全に維持・継承することができません。例えば、個別盛りでこそ学べる料理の配膳方法やいろいろなうつわの使用法などは習得しきれません。それに、好きな物を好きなだけ食べるので、食べる量が多くなりがちで偏食指導も難しくなる可能性があると思います。バイキングでも、栄養バランスをとるために嫌いな物を積極的に食べられるでしょうか?

ナイフやフォーク

 

ちなみに左は欧米料理のお皿の置き方。メイン(主菜)の位置が違います。主菜をたくさん食べるぞ!という置き方ですね。

■ 問題といわれている食事のしかた 
5つの「こ食」は食事をするうえで良くない方法といわれています。どうして良くないのでしょう?

(1)孤食・・・一人で食べる。テレビなどをみながら食べることもあるでしょうが、食事に対する興味関心が低くなるかもしれません。

(2)個食・・・家族などがそれぞれ別のものを食べる。食事を共有しないので、共通の話題が減るなどの弊害がでるかもしれません。

(3)固(定)食・・・同じモノばかり食べる。偏食(偏った食事)傾向があるということです。

(4)子食・・・子どもたちだけで食べる。食事作法や偏食の指導がない状態になるかもしれません。

(5)粉食・・・粉ものばかり、つまり柔らかい物をよく食べると咀嚼力の向上につながりません。

このほかにも、濃い味の食事ばかりを食べる、少ない量を食べる、という「こ食」を挙げる場合もあるようです。濃い味ばかりの食事は塩分過多や味覚障害など、体に悪影響を及ぼす可能性の高い食べ方です。少ない量の食事は、無理なダイエットによる成長阻害を懸念する場合もあると思いますが、少ない量の食事で、お菓子など間食する量が増えるのなら、結局食べ過ぎになったり、栄養バランスが崩れたりすることにつながります。また、「おなかがすいた」状態を作らないので、体のためにもよくありません。

 

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■ お箸について

お箸は、アジアの食文化の代表的な食具です。食べ物を口にはこぶためにはさみとる道具で、竹や木、象牙、プラスチック(使い捨てでないもの)、金属など、さまざまな材質の箸があります。箸とは、竹でひとところに物を集めるという意味の会意(形声)文字(漢字源より)です。

=食具とは=

食器が「食べるものを入れるうつわ」の意なので、「食べるものを口にはこぶため道具」のような意味です。欧米料理では、スプーン、フォーク、ナイフ、アジア料理では箸、レンゲ、さじ、手があります。手づかみで口に入れることが可能なもの、たとえばクッキーやおせんべいをわざわざ箸で食べる人はいないと思いますが、手づかみでプリンやアイスクリームは食べないでしょう?その地域の食事内容によって、それに合う食具が発達したのです。

体系的に分類すると以下のようになります。

食具形状熱い(冷たい)
食物
液体微細な食物 大きな食物
スプーン・さじ・レンゲ 角がなく、くぼみがある。 熱い(冷たい)まま
食べられる
すくう すくい取る  ×
フォーク くし状でくぼみがありと
がっている
熱い(冷たい)まま
食べられる
× すくい取る・巻き
つける・突き刺す
 崩す・突き刺す
ナイフ 先が丸く刃がある ×(むかない) × ×  切る
先の細い棒2本 熱い(冷たい)まま
食べられる
× はさみとる・すく
い取る
 崩す・分ける・
はさみとる
 5本指と掌 手でさわれる程度
にして食べる
すくう すくい取る  つかむ

 (参考文献:石毛直道、食べ物のかたち-温度と食具-、VESTA(60)、8-11、2005)

 フォーク

※ 液体(スープやみそ汁など)・・・容器ごと飲む場合がある。食具を使うのは具や液体の分量・種類による。液体によってはストローを使う。韓国のように、容器に口をつけるのが無作法(容器を持ち上げること自体無作法)の文化がある場合はさじを使う。

※ 微細な食物・・・具体的には白飯やクスクスのような穀類を指す。粉食文化の欧米ではパンや麺になるので、手やフォーク、スプーンで食べられる。大き  なパンはあらかじめ切って出されるのでナイフは用いない。タイ米が主食の場合はぽろぽろするので手やさじで食べる。

※ 大きな食物・・・個別盛りがメインで箸を使えることを想定する東アジアでは、先に切り刻んで調理する。よって、まな板が必需になるが、調理は台所で完了しているので、食卓でナイフを使用することはない。欧米は、中世までパンや麺を手づかみにして食べており<、肉も丸ごと焼いてテーブルで切り分けていた。最終的な調理は食卓の上でも行われていたことになる。なお、食卓に熱源を置いて調理する鍋物は東アジア独特の調理法である。

※ 熱い食物・・・手食文化の国では熱い料理を熱いまま食べられないので、平皿・鉢に盛って早く冷めるようにした。西洋は、昔、熱いスープにパンをつけて食べたのでスープは「食べる」ものであった。近年スプーンやフォークが普及した。日本は熱伝導の悪い木製や陶製の食器・食具が多く、熱い料理を熱いまま食べやすい状況であった。

きれいなお箸

(箸のいろいろ)
日本の箸は、頭や尻尾についた魚料理が箸だけで上手に食べられるよう、箸の先が細くなっている。「利休箸」といってお祝いの時に使う両端が先細りしている箸もある。中国では肉も含めていろいろ食べるのと、箸だけでなく、さじなども適宜使うことから日本の箸ほど先が細くなっていない。象牙に見立てたプラスチックの箸が多い。ベトナムなどでは、麺類を食べる時に箸を使うが、そのほかではナイフやフォークを使う。韓国の箸は衛生面を配慮して金属製が多いといわれている。

 

■ 食べ物のことば

 

■ 泡般若(隠語)

僧侶が肉食や飲酒を禁じられているためにできた言葉がいくつかあります。

 

日本酒・・・般若湯     ビール・・・泡般若
イノシシ(ボタン)、牛肉(冬ボタン)、シカ肉(モミジ)、馬肉(サクラ)、鶏肉(カシワ)・・・肉食ができないので、代わりの名前をつける

というように、大和言葉の植物名に変換したようです。(浜田義一郎「江戸食べ物歳時記」、中公文庫、1977より)

 

■ 食べ合わせ(食い合わせ)

一緒に食べると有害であると考えられている食物の組み合わせ。
「スイカと天ぷら」「梅干しとウナギ」「カニと柿」などがあるそうです。
昔からの言い伝えなので、東洋医学に基づいている場合(たとえば両方とも体を冷やす特性を持つ食物の組み合わせ)と、よくわからない場合があります。スイカと天ぷらのように、脂っぽいものとさっぱりして冷たいものを一緒に食べると「水」と「油脂」を一緒に摂っていることになり、消化するのに負担がかかる、というものもあります。こうなると、食べ合わせには経験則があるのかもしれません。「ふぐ」なんかは、食あたりになるとダメだというので、男性しか食べなかったそうです。

近年では、薬と食物が相互作用をするため、納豆やグレープフルーツなど一部の食品については、特定の薬と一緒に摂取しないよう注意書きがあります。

インターネットで検索するとたくさん出ています。

 

■ 調理用語

調理をする時だけに用いられる用語です。
調理や食事を楽しくするため?にシャレにひっかけて献立名をつけたり、故事や状況を上手に表現していることがわかります。レストランやらお惣菜屋やら、多くのお店がひしめく江戸で、少しでも自分の店の商品(料理)を多く売ろうとすれば、味もさることながら印象に残るネーミングの工夫が必要だったのかもしれません。そういえば、「土用のうなぎ」も平賀源内のアイディア広告だったとか。「節分の恵方巻き」はどうだったかな?

インターネットどころか、テレビやラジオすらなく、書物でさえも多くない江戸時代。書物があっても読めない人が少なからずいました。そういう状況で料理を教え/覚えるには、経験と自分の理解、反復練習に頼るしかありません。今でいう【レシピ】も【大さじ/小さじ】もないわけですから、おいしくできた時の味や所作を覚え込むわけです。そういう時には、言葉に工夫があるとわかりやすいですね。
例えば、歴史の年を【語呂合わせ】で、覚えた人はいませんか?それと同じです。

生活に根付く食文化の一つとして、いろいろ調べてみてください。


1) 献立に出てくる特殊な用語:シャレや昔から言われている表現が多い

「きつねうどん」(油揚げがキツネの好物ゆえ、油揚げをキツネという)
「たぬきうどん」(天ぷらのタネ抜き、つまり天かす入りのうどん。関西ではあまりみかけなかった)
「南蛮づけ」(揚げてから酢に漬けるエスカベージュやマリネのようなもの。南蛮貿易時に日本に広まった。ちなみに酢油漬けがマリネ、油の量が多いのがエスかベージュ)
「温泉卵」(卵黄が固まり卵白が柔らかい状態の卵。だしなどをかけて食べる。温泉の湯で簡単に作れることから)
「きんぴら」(ゴボウが固くて甘辛いのを坂田金時の子で怪力剛勇の武士、金平にみたてた。甘辛く炒め煮にしたものをきんぴらと称することもある)
「さしみのつま」(さしみの添え物(あしらい)の総称。けん、つま、薬味などがある。けんは大根やうどの千切り。つまは青じそや穂じそなどで、薬味はわさびが一般的であるが、イカは生姜を、かつおのたたきは生姜やにんにくを添えるなど、わさび以外の薬味も用いられる)
「煮しめ」(野菜や乾物など形を崩さないように煮付けたもの)
「ぬた」(魚介類や野菜を酢みそで和えたもの。見た目がどろどろとして沼田のようであるところから)
参考資料:スーパー大辞林,2012オールガイド五訂増補食品成分表(実教出版、2012)

2) 調理用語:以下は一例です。

あく(ゴボウやホウレンソウなどの野菜や肉類を調理する際に出る苦みや渋み)
あら熱をとる(鍋を火からおろしてすぐの熱をしばらくおいて冷ますこと。
完全に冷まさずに、30-50℃くらいにする)
すが立つ(茶碗蒸しや卵豆腐、プリンなどを作る時、火を通しすぎたり火加減が強すぎるために生地に細かい泡のような穴があくこと)
ささがき(ゴボウやニンジンなど棒状の材料をまわしながら鉛筆を削るように薄く削ぐ切り方。笹の葉のように削るから)
ゆでこぼす(材料をゆでた後にゆで汁を捨てること)
ゆがく(野菜などのあくをぬくために熱湯にしばらく浸すこと)
もどす(乾物類を水やぬるま湯につけて柔らかくすること。冷凍食品を解凍すること

ひたひたに水を入れる、と、たっぷりの水を入れる、と、かぶるくらいの水を入れる、はどうちがうか、わかりますか?調べてみてください。

参考資料:2010オールガイド五訂増補食品成分表(実教出版、2010)、2012オールガイド五訂増補食品成分表(実教出版、2012)

 

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