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グルコアルカロイド(ソラニン)中毒について

じゃがいもによる食中毒・・・?

ジャガイモは、でんぷんを簡単に採取でき、栽培も容易で、何より子どもたちが大好きな作物のひとつ。さつまいもと並んで小学校ではよく栽培されている作物です。品種も多くて、調理実習では【粘質】(煮崩れしにくい)の品種と【紛質】(煮崩れしやすい)の品種を使い分けることも教えることがあります。「粉ふきいも」がシンプルで分かりやすいように思いますが、今や「粉ふきいもって?コナフキイモ?」と言われかねないくらいの調理法・・・かもしれませんね。

外食ではあまりみかけなくなりました。ハンバーグの付け合わせもフライドポテトの方が多いかも。

粘質じゃがいも

メイクイーンを粉ふきいもにしたもの。

新しいイモではないので、これでも粉を
ふいています。
新しいと水分が多いので粉をふきにくいです。

紛質じゃがいも

こちらはキタアカリ。
少しオレンジがかっているのですが、
なかなか画像では判別しにくいです。

表面の粉の吹き具合が違うのが分かります。

 

何かと有用なジャガイモですが、毎年食中毒を引き起こすちょいとやんちゃな?ヤツでもあります。

ジャガイモはナス科の作物。ナス科というと、アルカロイドを含むものが多い科で、ジャガイモにもソラニンやチャコニンといったアルカロイド配糖体です。アルカロイド配糖体とは、窒素を含む塩基性化合物(塩基性化合物が多い)で、糖がついている化合物という意味です。農水省のサイトに詳細情報が出ていますので確認してください。

ジャガイモに含まれるアルカロイドはコリンエステラーゼという酵素を阻害し、腹痛や嘔吐を起こします。ひどいと呼吸困難や意識混濁になることがあるのですが、こういった症状は、大人と子どもで発症量が違うようです。ここが見落としやすいポイント。
ヒトでは、体重1㎏あたり1-3mgくらい摂取すると症状が現れる可能性があり、体重1㎏あたりの摂取量が3-6mgになると死亡する可能性があると言われています。子どもと大人で食中毒の発症量が違うのは、体重が違うから。小学校1-2年生の女子ですと、20㎏台の子どももいるかもしれません。それで20mgくらい食べると中毒症状を起こすと言われています。
成人の場合は、身長にもよりますが、20㎏ということはさすがになくて、50㎏台以上の人が多い気がしますが、まあ、実際に中毒を起こすかどうかは、その日の体調や合わせて食べた他の食品などにも影響されるかもしれません。年齢などによっても身体状況は変わります。自分がこうだから、というように、自分を基準にしないことは重要ポイントかもしれません。

また、市販のジャガイモに施されている発芽防止処理は特殊な設備が必要ですから、小学校で収穫されたジャガイモですと通常発芽防止処理を行いません。
新聞紙などに包み、更に段ボールに入れて風通しの良いところで保存します。が、やはり、保存期間が長くなれば(温度などにもよります)芽がでます。さらに、遮光がうまくいっていなければ表面が緑化することもあります。ジャガイモのアルカロイドは、芽の部分や緑化した部分には多いと言われていますが、皮の部分や可食部にも含まれています。未熟なジャガイモにも多いと言われています。例えばメイクイーンのS、M、Lでは、それぞれアルカロイド総量が200、180、120mg/kgだったそうです。(引用:下井俊子ほか、食衛誌、48、77-82、2007) *あくまで目安で、これがどのメイクイーンにも当てはまるわけではありません。

アルカロイドは芽が出始めるとその根元部分や皮にも蓄積し始めるようです。ジャガイモとて「植物」ですから、自分が育つための工夫だったのかもしれません。

食べる

子どもは、ちっちゃなジャガイモも「カワイイ」し
「モッタイナイ」のでぱくん、と食べてしまいます。

未熟なイモは、植え付ける時の種イモの間隔が
狭かったり、収穫期間が短かったりすると出来や
すいようです。市販品にない大きさも栽培すれば
でてくるかも。

ううむ。これは食中毒のリスクが高いから食べるな!ってこと?

スイセンやイヌサフランなどと違い、ジャガイモは一般的に栽培して食べている作物です。寒い地域でよく育ち、生産性も高いので、欧米では主食代わりに食べる時さえあるほどの主要作物。食経験の長い作物です。
ですから、今さら食中毒のリスクも高いし、小学校で栽培して食べるな??っていうのも変な話。いや、小学校に限らず、家庭菜園で栽培して食べている人はたくさんいるのですから、栽培しても問題なく食べられます。
品種は関係ないことにすると(上のメイクイーンはサンプルのなかで最も多かったそうです。)、通常、可食部100gあたりに2-10mgのアルカロイドが含まれていると考えられますが、この程度なら、子どもでもあまり気にならない程度ということかもしれません。下井先生の実験結果では、市販のお惣菜(茹でジャガイモや焼きジャガイモなど)でもアルカロイドが全く検出されなかった試料はなかったようでした。

ちなみに、ではありますが、リスクを下げる食べ方として考えられるのは、ゆでてつぶして混ぜてしまうこと。こうすると、未熟いもかどうかなんてわからないし、アルカロイドの少ないジャガイモも混ざりますから、喫食量あたりのアルカロイド量は平均化されそう。後は、170℃以上の加熱で分解するのでは・・・と書いてありましたから(上記の農水省サイトリンク先を参照)オーブンなんかもイイかも。ゆでてつぶしたものに少し片栗粉(じゃがいもでんぷん)を足し、ホットプレートで焼いてチーズなどトッピングしてもおいしそうです。

小学校では、「そのものの味」を教えることも食育指導のひとつと考えて、塩ゆでしただけ、や、揚げただけ、のジャガイモを試食することも多いかもしれません。時間も限られていればなおさら。上の粉ふきいもに塩をかけてそのまま食べちゃう。別にマヨネーズがなくても、おなかがすいていれば、100gくらい食べてしまうことはあるかもしれません。じゃがいもは重いですからね。お茶くらいはあるとしても、他に何も食べず、ジャガイモのみ!っていういさぎよい食べ方が食中毒につながりやすかったかも。しかしながら、調理実習では時間が短いですから、あまりアレコレ作れないのです・・・。

低学年なら調理実習の時間もとれるかどうか。栽培したジャガイモを食べたい時には、一度栄養教諭に食べ方やメニューを相談しても良いと思います。

家庭ですと、コロッケやポテトサラダにしたり、じゃがバターにしたり、カレーやシチューにするなど、何かしらプラスα(アルファ)してると思います。食事として主食や汁物、野菜料理などをとり合わせて食べること、は、結局食中毒を未然に防いでいることになるのではないかと思うのです。いろいろ取り合わせて食べる、って、食品の持つリスクを下げる意味でも重要なのだな、と思います。(取り合わせて食べることがジャガイモのリスクを下げている、という実験データはみたことがないので憶測ですが。)

ジャガイモは調理方法も多彩ですからリスクを下げる調理方法を考えてみるのも面白そう。

「化学と生物」53巻12号(2015)では、アルカロイドを含まないジャガイモを作り出す研究も進められている、と書かれていました。全く個人的な意見では、アルカロイドがあっても良いのでは、と思います。それで何百年(何千年?)とヒトは生きながらえてきたわけだし。有毒でどうしようもないっていうのなら、ふぐの調理師のように、特別な資格が出来ていると思います。「ジャガイモ専門調理師」みたいな感じの資格。必要なのかな?

2016年の7月に小学校でソラニン類の食中毒が起き、25人が食中毒症状を訴えた、という記事を目にしたので、まとめて書きました。ここでは栽培したジャガイモ(調理済み)に138.6ppm、150.6ppmのソラニン類が検出されたそうで、最も多い症状は吐き気(72%)だったようです。多くの生徒が食後2時間以内に発症しています。未熟なイモが多かったことと皮ごと喫食したことなどが原因ではないか、と言われているようでした。(引用:食衛誌、58、J-47~J-48、2017)小学校でのソラニン類食中毒は、毎年どこかしらの小学校で起きています。リスクを下げるための「調理」も調理の重要な意義です。生活のなかで「食べるものを調理して食べる」という作業をなくしてしまうことがないように配慮してください。調理は、アナログな作業ではありますが、段取りやサイエンス、文化など、様々な領域に配慮し、手足や五感、大脳をフルに動かす作業です。凝らなくてもいいし、好きにならなくてもいい。調理することは、歯を磨いたり洗顔したりするのと同じくらい基本的な行動なのではないかと思います。

 自然毒のリスクプロファイル:ジャガイモ(厚生労働省内サイト)

 調理実習(体験)等における食中毒予防(PDF) (厚生労働省内サイトPDF)